研究活動・実績

G6.全エクソーム解析によるゲノムプロファイリングに基づいた乳癌個別化治療の開発

(ヒトゲノム研究審査承認番号791)

研究課題名

全エクソーム解析によるゲノムプロファイリングに基づいた乳癌個別化治療の開発 (ヒトゲノム研究審査承認番号791)

研究対象

2001年1月~2018年3月に乳がんに対して当院で手術前に化学療法の治療を受けられた方で、先に行われた研究①:「乳がんに対する薬剤感受性診断法の開発」、および研究②:「遺伝子多型を用いた乳癌罹患リスク診断法の開発」に同意頂き、さらに残余検体を将来の研究に使用することにも同意を頂いている方が対象になります。①のみ同意を頂き、かつ残余検体の利用にも同意を頂いている方は、対象になる場合がありますが、この時は乳がん組織だけを用いた研究への参加となります。

患者さんのご家族の方へ

上記の条件を満たしていれば、その後にお亡くなりになられた患者の場合でも本研究の対象者となることがあります。

研究目的

乳がん組織の遺伝子情報を詳しく調べることにより、「乳がんの個性」を高い精度で診断し、各々の患者さんに適した治療を行う方法(乳がんの個別化治療)を開発すべく研究を行っています。
*現時点では本研究の結果が、あなたの診断および治療法の選択に使われることはありません。ただし、今後、乳がんの治療を受ける他の患者さんの治療方針を決めるための新しい基準になり、医療の進歩につながることが期待できます。
*遺伝子やゲノムの分析を行っていると、非常にまれですが、偶発的に重大な病気との関係が見つかることがあります。あなたやご家族などがその結果を知ることが有益であると判断される場合に限り、その結果の説明を希望されるかどうか、あなたに問い合わせをすることがあります。

研究方法

現在当研究室で保管しているあなたの乳がん組織や白血球から、あなたのすべての遺伝子情報をもつDNA(ゲノムDNA)をそれぞれ抽出し、塩基配列を読み取ります。そして両者の結果を比較することで、後天的にあなたの乳がん細胞に起こった遺伝子の変化(変異)を知ることができます*。
これは、全エクソームシーケンスと呼ばれる方法です。次に得られた遺伝子変化が生体内でどのような変化をもたらすのか機能面での変化を調べます。また、必要に応じて遺伝子の量的な変化や癒合遺伝子(本来は別々の2つの遺伝子が癒合(くっつくこと)し、あらたな一つの遺伝子となり、病的な作用を及ぼす)なども調べることで、あなたの遺伝子の状態を総合的に詳しく調べます(プロファイリング)。そして、これらの結果と、抗がん剤の効き具合や、再発のし易さなどと比較検討し、抗がん剤の効果や再発に関係しそうな遺伝子やメカニズムを明らかにします。
*乳がん組織での遺伝子異常(変異)は、通常、体細胞異常(変異)と言われ、親から子へ伝わることのない異常と言われています。しかし、正確には、乳がん組織での異常(変異)の中には、本当の意味での体細胞変化(変異)(後天的に起こった遺伝子異常)の他に、親から引き継ぎ生まれながらにしてある遺伝子異常(変異)(生殖細胞系列での遺伝子異常(変異)と言い、正常組織(本研究では白血球)からの解析で分かります)が含まれている可能性があります。従って、両者を比較することで、正確に後天的に起こった遺伝子異常(変異)を知ることができます。

研究に用いる試料・情報

乳がん診断時に針生検(マンモトーム検査など)で採取した乳がん組織と、手術前後に採取した血液検体を使用します。これらの検体は、すでに個人が特定されないように匿名化を行い、当教室で保管しています。従って、本研究への参加にあたり、新たに組織を採取したり、採血したりすることはありません。また、患者さんの年齢や月経状況などの個人情報や、乳がんの臨床病学的検査結果(大きさ、リンパ節転移の有無、ホルモン受容体の発現状況など)、再発の有無などの臨床情報なども匿名化を行ったうえで使用されます。

外部への試料・情報の提供方法

全体で100名前後の患者さんにご協力をいただく予定です。あなたの乳がん組織と白血球から取り出したDNAやRNAを匿名化した状態で、大阪大学と(守秘義務や個人情報の保護などの規定を含んだ)委託契約を結んだ検査会社に送り、全エクソーム解析やRNA解析などの測定を行います。測定結果は大阪大学で解析をします。また、その他の関連する解析や臨床病理学的データ(年齢、閉経の有無、しこりの大きさやタイプ、ホルモン治療、再発の有無などの情報)などと総合的に解析を行います。

研究組織

本研究は大阪大学大学院医学系研究科乳腺内分泌外科学教室で実施します。

お問い合わせ、研究参加辞退の申し出

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。 また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

連絡先

金 昇晋(准教授)
大阪大学医学系研究科・乳腺内分泌外科
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2-E10
TEL 06-6879-3772
FAX 06-6879-3779
E-mail:office@onsurg.med.osaka-u.ac.jp

研究責任者

金 昇晋(准教授) 大阪大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科